新年度も始まり研修も終わって、会社のウェブサイト更新担当に任命され、まったくの未経験ながらWebデザインをしなければならなくなった人もいるでしょう。また、今の仕事をやめ、Webデザイナーへの転職を目指している人もいるでしょう。未経験から、一人前のWebデザイナーになるにはどうすればよいのか、そのきっかけになるヒントをまとめてきたいと思います。自分のサイトを自分で更新している人にも参考になればうれしいです。
Webデザイナーに必要なチカラ
デザインの本質は、問題解決です。いきなり抽象的な話を聞いて、戸惑う人もいるかもしれませんが、要するにお客様が解決したいと要望している問題を、ビジュアルで解決するのがWebデザイナーの仕事です。その為にはまずはヒアリング力と発想力がなければなりません。それを前提に、以下の力が必要になるでしょう。
- ヒアリング力
- 発想力
- レイアウトをする力
- HTML/CSSでコーディングをする力
- どんなシステムで動いているのか理解する力
一つひとつ、紐解いてみましょう
ヒアリング力
お客様の要望を聞き出す力です。例えばバナーを作って欲しいという要望があるとします。単にどんなバナーを作って欲しいかだけでなく、何故バナーなのか、バナーを作ってどうなって欲しいのかなど、要望の根本にせまってヒアリングするようにしましょう。でなければ、良いバナーができたとしても、お客様の求めてる効果が出ない可能性だってあります。本当にバナーでよいのか今一度確認するようにしたいものです。
発想力
どんなデザインにするか、発想する力です。ここでは、引き出しの多さがモノを言います。普段から、Webデザインのアーカイブサイトなどで、新しいデザインを見ているか、美術館や、ギャラリーなどで、アート作品にふれているかが、発想を豊かにする原動力になります。常にアンテナをはってインプットを行っていきましょう。そして思いついたデザインを、クロッキー帳にいっぱい描き出してみましょう。
レイアウトをする力
実際にレイアウトをする力です。ウェブは、文字と背景、グラフィックや写真などの組み合わせで出来ています。強調したい要素は大きくしたり、逆に注釈は小さくしたり、色と大きさのコントラストに注意しながら組み合わせてレイアウトをしてゆきます。サイト全体をデザインするときはグリッドシステムなどの知識も必要になってくるでしょう。発想したデザインを見栄え良くレイアウトする力がここで求められるのです。実際のデザインの素材としてつかえるよう、フォトショップやイラストレーターを使いこなす力も求められます。フォント(タイポグラフィー)や色彩理論についての知識も求められれるでしょう。
HTML/CSSでコーディングをする力
紙のデザイナーと違い、印刷と紙の知識のかわりに、Webデザイナーが身につけないといけないのは、HTML/CSSの力です。大手ではコーダーが別にいるので、自分がコーディングすることは無いかもしれませんが、コーダーやエンジニアとのコミュニケーションを図る上でもコーディングはできた方が良いです。レスポンシブデザインなどスマホ対応を考えると、それにあったデザインというのも考えられなければなりません。その意味でも基本的なコーディング力は身につけておくべきです。
どんなシステムで動いているのか理解する力
プログラムができる必要がありませんが、自分の書いたHTML/CSSがどの様な仕組みで配信されていくかは、理解しておいた方が良いと思います。それがそのまま配信されるか、またはシステムに組み込まれて配信されるのかによって、コーディングの仕方は変わってきます。また、可能ならば、エンジニアとのコミュニケーションを円滑にするために、バージョン管理システムのGitの理解や、チャットシステムなども覚えておくと、スムーズに仕事が進むでしょう。
Webデザイナーにデッサン力は必要か
ここは非常に議論のわかれるところです。昨今の美大受験でもデッサンへの配点は下がる傾向があり、むしろ数学などの一般教養が要求されてきています。プログラムを生かしたメディアアートなどがあることから、美大でもプログラムの授業がある時代です。
とはいえ、私の持論からいうと、経験はしておいたほうがよい、持ってて無駄なものではないというのが、意見です。モノをじっくりと観察し、それを紙に定着していく作業は、思いの外、難しく、また良い経験にもなります。また、ちょっとした立体的なグラフィック、例えばアイコンのようなものをデザインするときでも、デッサン力のある人は、パース取り方が正確で、質の良いものを作ることができます。街場のデッサン教室はいろいろありますから、経験のない人は一度のぞいてみてはどうでしょう。とはいえ、僕もデッサンは苦手です。
むしろ、現場で直接役立つ力は、ちょっとしたマンガ(イラスト)を書く力です。ラフに書いたもので十分。たとえば、お客様とのコミュニケーションの場でも、絵で「こう言うことですか?」と質問をするだけでも話の本質に近付けます。実際のWebデザインの場でも、イラストが描けると、素材探しに苦労せず、大きな力になります。
デッサンがかければイラストが描けるというものでもないですが、イラストの上手い人はデッサンも上手いのも事実。マンガとなれば、なおさらデッサンとは関係なくなりますが、どこかでつながっています。昨今Webデザイナーにフロントエンドの仕事を押しつける傾向がありますが、Webデザイナーはビジュアル担当の要。絵心は十分に育てていきましょう。
まとめ
デッサン力から、タイポグラフィー、色彩理論に、フォトショップ・イラストレーターの使いこなし方まで、覚えないといけないことが一杯あって、どれから手を付けたら良いかわからないかもしれません。ソフトの使い方は、街のスクール等で覚えるのが一番手っ取り早いですが、僕は独学で覚えました。グリッドシステムやタイポグラフィー、色彩理論は良い本がありますので、買って勉強しておくとよいと思います。最後にデッサン力は身につくのに時間がかかりますから、じっくりと取り組むとよいでしょう。
初めから、全てを完璧にできる人はいません。まずは小さなバナーからチャレンジしてみてはどうでしょう。サイト全体を作るのはそれからで十分。バナーだって奥深いです。LPなどを作る機会があれば、それもまた独自のノウハウがあって試行錯誤することになると思います。一つひとつ、丁寧に着実に力を身につけてみてください。
(担当:小山智久)