ちょっと前に、いわゆる上流工程の方々によるセミナーがありました。とてもためになるセミナーだったのですが、その中でWebコンサルティングをやっている会社で、記憶に残った会社が2社ほどありました。
共通しているのは、コンサルティングから制作まで一気通貫で受託して、1件400万円以上の商いになっていること。制作の前段階、すなわちコンサルティングに力をいれていて、なぜこういう構成で、なぜこういうキャッチコピーで、こういうデザインになるのかを、お客さんにハッキリと理解してもらっているのが特徴的でした。
うちの場合、人数が少ないですから、上流工程も、下流工程(制作・実装)も僕がやることになります。文章まわりは、村山が担当し、規模が大きい案件や、プログラムが絡む場合は、下流工程は外注しているので、必然的に上流工程が残る形になります。
この上流工程をしっかりやらないと、下流工程をお願いする外注さんに迷惑をかけすることになります。お客さんもしかりです。上流工程を担う職種はさまざまありますが、もっとも広く関わっているのは、Webコンサルタントだと思います。このWebコンサルタント、具体的にはどんな仕事をしているのか、どんな適性が必要なのか、それが今回のテーマです。
Webコンサルタントの仕事
Webコンサルタントの仕事は、基本的に次のようなフェーズに分かれます。
- Webサイトを作る前
- Webサイトを運用中
- Webサイトを運用してしばらくしてから(4半期毎など)
上流工程だけではなく、公開後も仕事は続くのです。
Webサイトを作る前
具体的には3C分析(市場・顧客、競合、自社)や、ファイブフォース分析といったフレームワークを使って、お客様の強みや弱みを分析していきます。個人的には戦略BASiCSというフレームワークを好んで使っています。
並行して、現在のサイトのログ解析を行い、問題点の洗い出しなども行います。
業界内でのお客様の立ち位置、強み、弱みがわかったところで、顧客モデルとなるペルソナの作成にかかります。本来ならお客様のサンプルにインタビューして作るペルソナですが、予算がない場合は、プラグマティック・ペルソナでいいでしょう。
ペルソナができたら、それにもとづいて、カスタマージャーニーマップを作ります。エンドユーザーが、ウェブサイトを発見して、購買、またはお問い合わせに至るまでの、行動や心理の変化を一枚の地図にするわけです。
これらの仕事を、コンサル1人でやるのではなく、顧客とチームを組んで、みんなで作くっていきます。コンサルはいわばファシリテーターの役割を担って、チームがよい成果物を作り上げることに注力するわけです。
ペルソナ〜カスタマージャーニーマップが完成したら、IAやディレクターに、サイトマップやコンテンツインベトリー、ワイヤーフレームの制作を依頼します。この段階でも任せきりにせず、タイミングをはかって、意見を述べていく形になります。デザイナーやフロントエンドエンジニアが関わる段階も同様です。うちのような小さな会社だと、コンサルからここまで一気通貫になります。
Webサイトを運用中
ウェブサイトが完成したからといって、Webコンサルタントの仕事はこれで終わりではありません。むしろここから始まるといっていいでしょう。
ウェブサイトの目的には2種類あると思います。
- 「集客」を目的にしているウェブサイト
- 組織の存在証明を目的にしているウェブサイト
後者のサイトは、サイトのURLなり、会社名なりでアクセスしてくる人を対象としていて、一見さんは対象としていないサイトですが、それ以外の多くのサイトは「集客」することで、購買やお問い合わせを増やしたいと思っているでしょう。
ウェブサイトで「集客」するには、以下の方法が考えられます。
- SEO対策を行う
- Web広告に出稿する
SEO対策の内部施策は、制作時に対策済みだと思います。公開してから可能なSEO対策は、オウンドメディアを運用するという案があります。内部でコンテンツを用意できるのであれば、コストがかからないという利点もありますが、効果がでるのに時間がかかる、コンテンツを書くのに負担がかかると、始めるのにそれ相応の覚悟が必要な施策です。
そこで、即効薬として選択されるのがWeb広告です。おもに検索結果に表示されるリスティング広告や、サイトにバナーで表示されるディスプレイ広告などを、運用します。キーワードを考えたり、広告文やビジュアルを考えたり、予算管理をしたりします。本来的にはWebマーケターの仕事ですが、多くのWebコンサルタントが、広告の運用代行をしています。
Webサイトを運用してしばらくしてから
短い場合は1ヶ月毎、長い場合でも4半期毎に、ログ解析と分析の結果を報告書の形にまとめて報告します。専任のWebアナリストがいれば、その人の役目ですが、WebコンサルタントやWebマーケターが行う場合が多いようです。
広告の運用に関しても、同様に報告を行います。広告の効果が落ちているようであれば、その原因を探り、改善案として提案します。CPA、LTVといった用語の理解も必要です。
日々、PDCAを高速に回すのも重要ですが、中長期のPDCAも重要です。こうやって顧客とともに、ウェブサイトを「集客」できるサイトとして育てていくわけです。
どんな人がWebコンサルタントに向いているのか
Webコンサルタントの仕事の一部を紹介しましたが、どういった人がWebコンサルタントに向いているのでしょうか。一般的に以下のようなスキルを持っている人がWebコンサルタントに向いていると思います。
- コミュニケーション能力
- 問題解決力・論理的思考力
- 業界知識
コミュニケーション能力
コンサルは、お客様に一方的にプレゼンして終わりの仕事ではありません。むしろお客様とチームを組んで、問題解決をしていく仕事です。そのためには、高度なコミュニケーション能力が問われます。コンサルタントが答えをすべて持っているわけではありません。むしろお客様から答えを引き出すファシリテーターであるべきだと考えます。
問題解決力・論理的思考力
ぐちゃぐちゃにこんがらがっている問題を、一つひとつ整理して、問題点を洗い出す力が必要です。時には俯瞰で見る、また近寄ってみるなど、問題の本質を捉えようとする姿勢が求められています。見つけた問題をロジカルに分析し、お客様へ解決策を提示するなど、論理的に考え、問題を解決する力が必要です。
業界知識
広く浅く知っていればよい知識と、狭く深く知っている必要のある知識があります。ただしデザインから開発まですべてにおいて、どのような工程があるのかは知っている必要があります。たとえば、普通のサーバーとクラウドサーバーの違いについてといった知識です。
一方、戦略策定、サイト設計については、深く知っている必要があります。広告運用代行をするのなら、Web広告についての知識も必要です。日々、仕様が変わっていくWeb広告、基本的なところを押さえた上に、トレンドを追いかける必要があります。
まとめ
Webコンサルタントの仕事と、適性についてまとめてみましたが、いかがでしたでしょうか? ウェブサイトの制作依頼をして、いきなりデザイン案の提示を求めるのではなく、まずは、じっくりと、自社の強み、弱み、について、Webコンサルタントと話し合ってみてはどうでしょうか。それが良いサイトが出来る秘訣です。
「自分の強みは、自分にはわからない」と言う言葉もあります。第三者の目で自社の強みを発掘してもらって、それをウェブサイトで表現できれば、競合のサイトから頭ひとつ突き出したサイトが作れると思います。
弊社、キゴウラボでも、Webコンサルティングをお受けしています。じっくりと話しあって、ウェブサイトでなにを伝えていくかを一緒に考えてゆきます。ぜひお問い合わせ下さい。
(担当:小山智久)