UX(ユーザーエクスペリエンス:ユーザー体験)というコトバが、一人歩きしています。求人欄には、UI/UXデザイナー募集という項目が沢山ならんでいます。なんでUIと組み合わせなのでしょうか。とある会社さんからのご依頼で、インハウスのグラフィックデザイナーさんにもわかるように、UXを説明してほしいと言われ、ちょっとしゃべってきました。この記事はその時にしらべたこと、しゃべったこと、反応があったことを散りばめてみました。初心者向けの記事です。

27も定義があるUX

UXの総合情報サイトであるAll About UXには古いもので1996年のものから2010年のものまで27件もの定義が掲載されています。すなわち、人の数だけUXの定義はあるということです。

シンプルに考えれば、UXとは、「製品やサービスを使う体験」と言えます。UXデザインについては、安藤昌也氏が書籍で「使ってうれしい体験をデザインする」と定義づけています。要するに、ウェブサイトの表層や、アプリのUIをデザインするのではなく、それを使っている体験そのもの向上をデザインするのが、UXデザインということです。

体験そのものを改善するためには、デザイナーひとりの力ではできません。マーケティング、エンジニア、デザイナー、場合によっては経営者も参加して、体験を企画する必要があります。デザインシップの広野さんは、ブログ「UXとはみんなでちゃんと企画すること」と定義しています。これも一理ある定義です。UXを成功させるためには、いろんなドメインのスタッフが1箇所にあつまり、模造紙と付箋をつかって、アイデアの発散、収斂を行う必要があります。

いずれにせよ、「徹底的にユーザーを理解してデザインすること」が、UXであり、UXデザインであることは間違いないようです。

ここでちょっと持論を書きます。

大きなUXと小さなUX

大きなUXは、なんと定義がISO/JIS規格で決まっています。UXの親方、HCD(人間中心設計)「インタラクティブシステムの人間中心設計プロセス」のなかで、UXは、次のように定義されています。エンジニアから、決まっているならそれつかえばいいじゃんって声が聞こえてきそうです。

製品、システム又はサービスの使用及び/又は使用を想定したことにより生じる個人の知覚と反応

…..よくわからない。

どうも、勝手な解釈ですが、UXには時間軸があるということなのです。

UXの時間軸

引用:https://hajipion.com/2321.html

予期的UXは、広告部門やマーケティングの担当者を巻き込んで、購買前の出会いについてもUXとしてデザインする必要ということです。ユーザーはカタログをあつめて比較したり、Webサイトで比較検討したりします。予期的UXには、それに対応した広告、販促のさまざまな仕掛けが含まれます。

利用中UXは、まさにサービスや製品を使っている瞬間です。開発的にはUIデザイナーやグラフィックデザイナー、プログラマーが頑張るところ、第一印象がとても重要な体験ということで、瞬間的UXという場合もあります。

利用後UXは、このアプリよかったなぁとか、このサイト参考になるなとか思い出にひたっていただき、あわよくばSNSでシェアーしてもらう場面です。

累積的UXは、商品との出会い、購入(使用)、内省と、製品との思い出にひたって、購入して良かったな/悪かったなと回想する時間です。

このように、UXは、製品やサービスを利用している瞬間だけでなく、その前後の時間も踏まえてデザインしなければならないという考え方です。そのためには、パソコンの前でぐりぐりイラレをいじっているだけでなく、建物の外にでて、製品を買おうか悩んでいる人を観察したり、サービスを利用している友達にカフェでインタビューしたりすることがとても重要になります。

小さいUX

一方、小さなUXというのも考えました。
小さなUX≒UIです。俗にいうUI/UXです。

製品やサービスを使っているとき、ユーザーにとっては「UI」が体験の全てです。いろんな企画や思いも、「UI」で体験できなければ、伝わりません。それほど「UI」は重要です。UXを極めるためには、まずはUIからという考え方にも、一理あります。大きなUXを意識しつつも、精細なUIをデザインできるUI/UXデザイナーが引く手あまたなのは、そんなところに理由があります。

冗長なUXワークフローを改善する

一般に、ユーザー調査を含むUX実践を行おうとすると、例えば以下のようなタスクを行う必要があります。

  • ユーザビリティ評価
  • プロトタイピング
  • ペルソナ作成
  • 構造化シナリオ
  • ユーザー調査
  • カスタマージャーニーマップ
  • ユーザーモデリング

個々のタスクがどういったものなのかは、ここでは説明しませんが(僕も勉強中です)とにかく大変。いつになったら製品やサービスができるのでしょうか?

その問題意識は海の向こうでもあったようで、それに対抗する、リーンUXと言われる方法が提唱されています。

高速にUXを行う、リーンUX

リーンUXは、デザイン思考+リーン+アジャイルでできています。

初学者に説明すると、デザイン思考は、非デザイナーもデザイナーのようにラフ書いて試作して、それを改善してといった循環活動で考えようということです。

リーンは、リーンスタートアップで有名になったコトバで、トヨタ生産方式にその原点があります。新しい事業を小さくはじめて、成功するかどうか見極めると言った方法を言うようです。

アジャイルは、設計→開発→検証といったソフトウエア開発の流れを、小さな単位で何度も反復することを言います。

すなわち、リーンUXは、UXを小さなトライアンドエラーで実践する方法なのです。

ツールも、先ほど紹介したような、大規模なものでなく、5分で書くプラグマティックペルソナや、6up Sketchesといわれる6コマ漫画をつかったシナリオ検証法など、すぐにでも出来そうな方法が用意されています。

仮説からはじまり、デザイン・開発 → MVP(Minimum Viable Product) → リサーチ&フィードバック → 仮説にもどると、リーンUX自体も反復活動を主体としているのですが、このなかで重要なのが、MVPとよばれる、実用最小限の製品の存在です。最短5日ぐらいで作ることを推奨されているMVP、最低限の機能をもった製品をリリースして、市場からの反応を聞いてみようということです。このことで、早い段階でユーザーの反応やフィードバックを集めることができて、次のバージョンを制作できるわけです。

UXはいろいろ調査しないといけないから実践が大変だとおもわず、こんな気軽な方法もあるのだということを覚えておいて頂ければと思います。

結局UXってなんなの?

いろいろ脱線しましたが、結局UXってなんなのでしょうか?
ちょっと長めですが、私はこんな感じで考えています。

「使ってうれしい体験を、仮説、試作、テストの短い繰り返しで、ユーザーも巻き込んで、みんなでデザインする」

UXデザイン診断も、単なる見た目だけのデザイン診断ではなく、みているユーザーのことをまずは考えながら、診断するという意味でUXを枕につけました。複雑化するウェブデザイン、もしフリーのグラフィックデザイナーさんで、ウェブのことを周りに相談する人がいなかったら、ECサイトの運営者さん、リニューアルを依頼したら、見た目優先になってしまって、もしかしてユーザーの気持ちをおろそかにしてしまったのじゃないかと悩んだら、ぜひUXデザイン診断をおすすめします。よろしくお願いいたします。

追記

ウィキペディアのユーザエクスペリエンスの項目が、よくまとまっててわかりやすいとのご意見を頂きました。UXデザインは出来ない、出来るの議論など、興味深い項目もあります。ご参考下さい。

ユーザエクスペリエンス(ウィキペディア)