今さら聞けない「サービスデザイン」ってどんなもの?

最近、よく目にする言葉に、「サービスデザイン」というものがあります。「サービス」の「デザイン」のことかと読んでみると、あくまでも「サービスデザイン」で一つの言葉です。どういう意味なのでしょうか。

そもそもサービスって何?

そもそも「サービス」とはなんでしょう。サービスの反対語に、「プロダクト」があります。「プロダクト」は有形で触れることができて、消費が可能なものです。一方、「サービス」は、無形で触ることができず、瞬間的に交換されるものです。病院、郵便、公共交通機関などを想像してみるといいでしょう。

しかし、今日では、その境界線が危うくなっています。ある楽曲について考えてみましょう。CDというプロダクトをプレイヤーにかけて聞くのと、Apple MusicやAmazon Prime Musicから、ストリーミングやダウンロードで聞くのと、聞いている本人の体験は同じです。同じ体験を、プロダクトからもサービスからも得ることができるのです。

サービスには、バックステージ(裏方)とフロントステージがあります。レストランを想像してみてください。ウェイターが料理を運んでくる食卓が、フロントステージ、シェフや皿洗いが料理を作って、片付けをするキッチンがバックステージです。このフロントステージと、バックステージの連携がスムーズでないと、良いサービスを提供することはできません。

サービスデザインとは

「サービスデザイン」という言葉は、1982年にLynn Shostackによって作られました。バックステージのプロセス同志の関連性について、それがバラバラに管理され、組織としてまとまりがないと、市場のニーズをつかむことができないという文脈から生まれた言葉です。

ニールセングループのService Design 101(Sarah Gibbons)では、サービスデザインを以下のように定義しています。

定義:サービスデザインとは、(1)直接的には従業員のエクスペリエンスを、そして、(2)間接的には顧客のエクスペリエンスを改善するために、ビジネスのリソース(人、小道具、プロセス)を計画し、組織化する活動である。

再び、レストランを想像してみましょう。優れたサービスデザインをしたレストランでは、例えば食のアレルギーの情報などが、ウェイターからシェフにスムーズに伝わります。客はこのような体験をして、次もこの店に来てみたいと考えるでしょう。そのためには、バックステージは食材の受け入れから、新しいシェフの雇用、新しいメニューの開発など、各人がバラバラに行うのではなく、「デザインされた役割」からユーザー体験が得られるように、ルールにもとづいた行動を行う必要があるのです。

サービスデザインとはどのように行われるのか

「サービスデザイン」もデザイン活動の一つに過ぎません。他のデザイン同様、基本的な考え方は同じです。すなわち、昨今ではデザイン活動の中心的な考え方になってきた「デザイン思考」にもとづいて行われるのです。

  1. ユーザーをよく知る
  2. 課題を定義する
  3. 問題解決につながる行動パターンをデザインして行う
  4. デザインが機能しているか評価する
  5. 1に戻る

通常のデザインだと、プロトタイプを繰り返し作ってデザインするわけですが、サービスデザインは無形のものをデザインしますので、プロトタイプが作ません。その代わりに、例えば、厨房の中の導線といった無形の行動パターンをデザインして、みんながうまく連携できることを繰り返しデザインすることで作り上げるわけです。また、インタンジブル(触れない)なサービスは、最終的にタンジブル(触れられる)なものに変換される場合があります。レストランであれば、出てきた料理、公共交通機関なら、車両の乗り心地、病院なら処方された薬などです。インタンジブルがタンジブルに変換されるポイントに注目して、ユーザー体験をデザインすることが重要なポイントでしょう。

まとめ

いくつかのブログを参考にして、自分なりの考えを加えて書いた記事ですが、「サービスデザイン」をいまだ、サービスとデザインに分けて考えてしまうところがあります。サービスデザインがとっつきにくい点は、このようにサービスとデザインにわけて考えないという点です。慣れの問題かもしれませんが、サービスがインタンジブルだからというのもあるかもしれませんね。。

最後に、デザインの領域は、このように、目に見えるものから、目に見えない、触れないものにまで、その適用範囲を広げています。職場で、インタンジブルな問題があったら、ぜひサービスデザインで解決することを試してみてください。私たちもお手伝いいたします。

参考サイト 

サービスデザインの基礎
https://u-site.jp/alertbox/service-design-101

サービスデザインとは何か
https://www.concentinc.jp/design_research/2011/12/service-design/

(担当:小山智久)