守秘義務契約を締結するとき注意する事

業務を受託したり、発注したりするときに、守秘義務契約(NDA)を締結することが多くなりました。仕事上でやりとりした秘密情報を外部に漏らさない為や、そもそも外部に委託していることを内密にしたい場合に締結されるこの契約、契約書によって微妙に内容がことなります。そこで、注意しておきたい点を整理してみました。

まず、前提として、私は法律の専門家ではありませんので、実際に締結される場合は、専門家(弁護士)等の確認をとったほうがよいということをオススメします。あくまでも実務者の経験から述べていきたいと思います。

秘密の範囲

「本契約において秘密情報とは、甲が乙に委託・以来する業務(以下「本目的」といいます)を乙が履行するために、甲が乙に開示した技術上または業務上のすべての情報であって、次の各号にさだめるものをいいます。

(1)甲が乙に交付する資料・仕様書・CD-ROM、DVD、USBメモリ、その他の媒体(以下「秘密資料」といいます)に記録された情報。

(2)甲が、口頭・OHP・スライド等資料の交付を伴わない形態で乙に開示した情報。」

秘密またはConfidential等の言葉で、秘密情報となっているものだけを対象とするのか、開示された、または口頭や各種メディア、プレゼンの画面等で伝えられた情報すべてが対象になるのかを確認しましょう。最近は運用の面倒さから、後者のケースが増えているように思います。

秘密の例外

(1) 開示時にすでに受領者が正当に保持していた情報
(2) 受領者が受領したとき、すでに公知であった情報
(3) 受領者が受領した後、受領者の責めに帰すべき事由によらず公知となった情報
(4) 受領者が正当な権限を有する第三者から守秘義務を伴わず入手した情報
(5) 秘密情報を利用することなく独自に開発した情報
(6) 開示者が書面によって事前に承諾した情報

大体このような除外条項があると思います。主に、最初から秘密情報じゃなかった(公知の事実だった)ものは除外するよということです。なかったら要注意です。

再委託の制限

「甲及び乙は、本件業務について、相手方の書面による事前の承諾がない限り、再委託を行ってはならない。」

これによって、外注する場合は、発注元の承諾が必要ということになります。事前に次のような文面が追加されている場合もあります。

「被開示者は事前に開示者の承諾を得たうえで、請負業務の遂行に必要な範囲内で第三者に秘密情報を利用させ、若しくは取扱わせる場合、当該秘密情報が漏洩し、又は不正利用等されることを防止するため、第三者との間で本契約と同等の秘密保持義務及び目的外不使用義務を明確にした契約を締結するものとする。尚、第三者が秘密保持義務及び目的外不使用義務に違反した場合、被開示者は開示者に対して当該違反の責任を負うものとする。 」

要するに、発注元の承諾のうえで、外注先ともNDAを交わし、その遵守の責任は外注元がもつという内容です。少々厳しいですが、発注元から考えると必要ですよね。

秘密情報の破棄

「甲及び乙は、以下の各号の一に該当する事由が生じた場合は、相手方の指示に従い、秘密情報等が記載ないし記録された書面、図表、記述、報告、記憶媒体等の有体物(秘密情報等がコピーされた有体物を含む)の一切を直ちに相手方に返還し、あるいは、記憶媒体の一切から消去するものとする。」

以下の各号に、開示者の要請とか、業務の終了とかがあげられるのですが、ようするにプロジェクトが終わったら、もらった資料は破棄してくださいね。ということです。これは問題ないですよね。

秘密保持の期間

「本契約の有効期間は、本契約締結日から1年間とする。但し、契約期間満了の1ヶ月前までに、一方当事者より別段の書面による意思表示がなされない場合は、新たな期間を1年間として自動更新されるものとし、以後も同様とする。」

要するに、発注元がもういいよと言わない限り、永遠に秘密は続くというわけです。本当は3年ぐらいで、開放してほしいものです。

発明等の権利

「甲及び乙は、本目的の過程で得られた著作物、発明、考案等の知的財産の取扱いについては別途文章による取り決めを行い決定します。」

上記の場合、別途協議とあるのでまだいい方ですが、アメリカの某大手OSを作ってる会社と契約を結んだときは、会議での発言から、制作過程でのアイデアまで全部発注先のものという契約もありました。その時は法務チェックで修正させたのですが、元々自社で持っていたライブラリーや、今回の制作のために作ったフレームワークなどが、発注元の権利になってしまうような条項がある場合があります。ここはよく確認のうえ、問題あれば修正してもらいましょう。

以上、くり返しますが、私は法律の専門家ではないので、実際に締結するときは弁護士に確認のうえ締結することをオススメします。ひな形はこちらのサイトでも配布していますので、参考にしてください。

しかし、守秘義務があるために実績が公開できないのは、なんとかならないですかね。うちは守秘義務契約を締結してお仕事をいただくケースがほとんどで、そのため、なかなか実績が公開できず次の営業に影響が出て困ってます。公開していいよって仕事はお安くおうけしますので、ぜひご相談ください。

後日追記(2018年12月10日)

参考になるサイトを見つけました。なんと経済産業省がNDAのひな形をPDFで公開しているとのこと、それをわざわざWordに変換してくれている方がいました。参考にして下さい。

経済産業省が公開する「NDA(秘密保持契約書)ひな形」をご存知ですか?

(担当:小山智久)