UXデザインの贅肉をそぎ落とす。リーンUXとはどんなもの?

「リーンなんちゃら」っていう言葉を、よく聞くようになりました。リーンスタートアップに、リーンアナリティクス、そもそもリーンってなんでしょう。それもUXにかかっているとなおさら気になります。上手く説明できるか分かりませんが、調べてみました。

リーンとは贅肉をそぐこと

リーンとは、贅肉を削ぐ、削いだ状態のことを言うようです。無駄のないという意味でもつかいます。もともとは、トヨタの無駄を省いた生産方式を「リーン生産方式」とアメリカの学者が命名したのが初めのようです。その考え方を、まずはスタートアップ(起業)につかったのが、リーンスタートアップです。リーンUXもその考え方に大きく影響をうけています。デザイン思考とアジャイル開発、そしてリーンスタートアップを基板にしたものがリーンUXといえるでしょう。

でもそもそもUXってなんでしたっけ。まずは再確認です。初心者向けの過去の記事「今さら聞けない。UIとUXの違い」では、「ユーザー体験」のことだと説明しました。ただこれだけでは、少々もの足らないですね。奥の深いUX、ネットではいろんな定義があります。そのなかで、なるほどと腑に落ちる説明をしている記事がありました。hajipion.comの「意味不明なことばかり言ってるUXデザイナー達の代わりに「UXデザインとは何か」を端的に説明しよう」です。

この記事によると、UXデザインとは、「みんなでちゃんと企画すること」だそうです。企画職、エンジニア、デザイナーが一個所にあつまって、チームとして企画をつくること、その精神はリーンUXでもうたわれています。そしてその時、デザインはデザイナーだけの専売特許ではなくなります。いわゆるデザイン思考ですね。もちろんUXとUXデザインは意味が違いますが、何となく、その精神がわかるような気がします。

リーンUXとは

リーン開発手法を、UXデザインに適用したのが、「リーンUX」です。UXデザイン(UCD)の贅肉を削ぎ、デザインプロセスを短縮することで、よりよいモノやサービスを作る事を目指す手法です。

長期にわたる開発において、コンセプト作成時、プロトタイプ作成時、試作品作成時の度ごとに、顧客からのフィードバックを得て、市場の変化にも対応して適宜転換して、リリースしていく。そういった試みのことを言います。ここで重要なのは、リリース前からの頻繁な顧客からのフィードバックです。

Think-Make-Checkサイクル

各デザインプロセスのステージにおいて、もっとも重要なのは、Checkから得られた計測可能な「学び」を、次の「Think」そして「Make」につなげることです。このサイクルを、できるだけ細かく行うことで、早い段階で、それが顧客にとって満足がいくものかどうかが分かります。PDCAサイクルをもっとコンパクトに、分かりやすくしたものみたいですね。

MVPとプロトタイピング

MVPとは、Minimun Vaiable Prodact の略で、日本語では「実用最小限の製品」と訳します。リーンUXの発想では、最初から完璧な製品を求めるのではなく、最低限度実用に耐えられる製品をできるだけ早い段階でリリースし、市場からのフィードバックを得るという考え方があります。私もMVPとはそういう市場にだす製品のことを言うのだと最初理解していたのですが、どうもそうではなく、あくまでも学習のためのフィードバックループを1周まわせる、プロトタイプも含むようです。

プロトタイプは、抽象度の高いペーパープロトタイプから、より実物に近い実装済みのプロトタイプまで、そのデザインプロセスの段階にあわせて、使い分けてゆきます。ポイントは、Think-Make-Checkサイクルがスムーズに回るプロトタイプを選択することです。早い段階から、実装済みプロトタイプを選択していては、いつまでたってもMakeが終わらず、Checkの段階に進みません。Thinkの段階で立てた仮説が正しかったのか、素早く検証し、次の実装設計を行う。こういうプロトタイプや製品をMVPと言います。

もちろん、アーリアダプター向けにリリースした製品やサービスもMVPと言えますので、プロトタイプから製品まで幅広く含むと考えてよいと思います。ポイントは素早いフィードバックループが回せるかどうかです。

そういえば、身近な例で、アドビもAdobe Experience Design CC(通称 Adobe XD)を、長い間βリリースして、市場とコミュニケーションを取っていますが、これもMVPの一つと考えても良いかも知れませんね。

プラグマティックペルソナ

リーンUXで、一番個人的にヒットだったのは、プラグマティックペルソナです。通常のペルソナは、ユーザーインタビューなどで、ペルソナ像を調査し、その結果に基づいて、様々な項目について考察してゆきます。それに対して、プラグマティックペルソナは、制作者の想像に基づいて、限られた情報を書き出します。

書き出す情報は、次の通りです。A4の紙を4つ折りにして、手書きで

  • (左上)似顔絵と名前
  • (右上)行動に結びつく顧客情報
  • (左下)ニーズとペイン(不満点)
  • (右下)潜在的なソリューション

を書き込みます。上2つは、ペルソナのよくある情報ですが、下2つが特徴的です。左に現行の製品に対するニーズや不満点を書き込み、右にそれに対する解決策を書き込みます。

pg-persona.png

引用:書籍、LEAN UX(オライリー)から

ユーザー調査から得られた情報ではないので、あくまでも疑似ペルソナですが、十分役に立つと思います。

リーンUXは、極力ドキュメントを廃し、検証できる成果物を作ることに注力します。プラグマティックペルソナも、その一つの手段です。ペルソナづくりの省力化により、検証可能な成果物を早く用意できます。その他、特徴的なドキュメントとしては、A4の紙を6つに分割して、6コママンガでペルソナとその不満点や解決策を書き出す6upスケッチングなども使われるようです。その他、スタイルガイドなども、デザインの共有のために作られることが多いようです。

6-up.jpg

引用:http://kelsanford.com/inspireboard/

まとめ

リーンUXの全貌というより、つまみ食いできるとことを、取り出して紹介したような記事になりました。リーンUXには、まだ仮説の扱い方や、デザイナー/非デザイナーのコラボレーションの仕方など、いくつも魅力的なソリューションが含まれています。この記事を読んで興味をもったら、文末でご紹介する書籍を手にとって、ご自分のプロジェクトに組み入れてみてはどうでしょうか。

参考サイト:

参考記事:

参考書籍:


(担当:小山智久)