メディアを運営するなら知っておきたい引用と著作権

DeNAが運営するキュレーションメディア「WELK(ウェルク)」掲載記事の内容と信憑性、そしてその運営手法に関して物議を醸しています。このような事態になった経緯はさまざまありますが、ここで注目したいのが「著作権」と「引用」です。

メディア運営をするのであれば、気をつけておきたい「引用」と「著作権」について参考にすべき本など紹介します。

なぜキュレーションメディアには引用が多いのか
ー 二次情報記事制作が当たり前の理由

キュレーションメディアに限らず、インターネット上においてコンテンツマーケティングを目的に運営しているメディアは総じて引用が多いのが現状です。

新聞・雑誌も同じようにメディアに数えられるものですが、コンテンツマーケティング用のメディアとは違い、基本的に「情報を伝えるという社会的使命」をもとに運営されているものなので、種類が違うと言っていいでしょう。

コンテンツマーケティングのためのメディアは、広告・販促といった要素が強いからです。

コンテンツマーケティングは閲覧者を増やして収入(もしくは見込み客のデータ)を得ることが目的のものであり、その閲覧者を増やすためには検索エンジンに露出したり、他媒体に記事を提供したりすることで、露出を増やさないといけません。そのためには、検索エンジンに検索されやすいキーワードを多く含んだ記事や閲覧者がシェアしたくなるような記事がたくさん必要になってくるわけです。

それもこれも検索エンジンの検索アルゴリズムが「コンテンツの質」を名目に、サイト内の情報の多さ、字数の多さなどを見るようになったということが影響しているからでしょう。

その記事を大量に「生産」するためには、早く多く、そして安価に記事を作らないといけません(なぜ記事が安いのかはまた別の機会に)。それに対応できるライターが必要となりますが、いちいち取材していては、大量生産はできません。さらに安価な原稿料で引き受けるライターも足りません。そこでさまざまな文献やネット上の情報を元に作成する「二次情報記事」が生まれ、ここで引用と著作権侵害問題が起こるわけです。

著作権と引用で気をつけるべきこと

引用することは良くないわけではありません。
記事においては引用することで、その記事の信頼性を高め、より精度の高い情報を提供する場合もあるからです。とはいえそこにはきちんと線引きする必要があります。

引用文を自分の書いた記事と混ぜない

引用した記事を自分が書いたようにしないということ。これは引用云々の前に著作権侵害にあたり「盗作」ともいえ、あきらかに法律違反です。

記事の引用度合いについてはライターの常識と力量にもよってしまうところが実情であり、さらに記事のオリジナル性についてはなかなか判断しづらいところがあります。

ライターの書いた記事をチェックする場合は、以下のようなツールがあります。
Web上の膨大な記事データと照合できるツールです。

コピーコンテンツチェックツール「影武者」
https://kagemusya.biz-samurai.com/

引用文は自分の書いた記事とは区別できるようにする

この場合、引用した部分は一字一区改変せず記載することが前提であり、その部分はカギ括弧でくくる、書体を変えるなど明らかに自分の書いた物ではないということがわかるようにし、かつどの文献(Webサイト)から引用したのかを明記することが必要です。

 参考)「 他人の論文を自分の論文中に引用する場合に、要約して利用することも許されますか」
http://chosakuken.bunka.go.jp/naruhodo/answer.asp?Q_ID=0000353
(文化庁「著作権なるほど質問箱」より)

思い出して欲しいのは<BLOCKQUOTE>タグです。HTMLタグにはちゃんと引用等で使うタグがあります。私も永江一石氏のブログを読むまで忘れてたのですが…(「自分が考える「正しい引用」ってこんな感じ(ご意見求む)」より)。ただし囲まれた文章をGoogleが自動的に認識するかどうかは見解がわかれているようです。なので<BLOCKQUOTE>タグで囲んだ上でさらに引用元も明記すべきでしょう。

参考)「海外SEO情報ブログ」
https://www.suzukikenichi.com/blog/google-doesnt-use-blockquote-as-a-signal/

写真、イラストの制作者は誰か

この記事を読む人の多くはホームページを制作する人、メディアを運営する人だと思います。
ライターが用意した写真等の画像はライター自身の撮影か、または素材サイトからのものかの確認は必要です。
場合によっては、ライター自身の撮影以外の素材は、使用する素材集サイトをあらかじめ指定しておくという方法もあります。
その際は画像のIDを明記してもらうこと。明記のない画像は使用不可にするなど厳密に管理しましょう。

キュレーターという存在と編集者の不在

弊社ブログ記事「今さら聞けないキュレーションサイトってなに」においても記載していますが、キュレーションメディアではライターのことを「キュレーター」と呼んでいます。本来、美術館などで展覧会 企画・構成・運営などを行う専門職のことを言っていましたが、情報等をまとめ、企画構成し記事にするという意味でキュレーションメディアでも使われているのでしょう。
とはいえ情報をどのような意図をもってまとめ、記事にしたのか、それを精査する役割は必要です。
その役目を担うのが編集者であり、編集者がいない場合はディレクターです。

インターネット全体の信頼性を損なわないように

自社運営のメディア、ホームページ上の掲載情報はもっとも注意すべきものです。ここでの誤った情報や、稚拙な運営は自社の信用問題だけでなくインターネット上の情報への信頼性に関わることだということを、メディア・ホームページ運営担当者は肝に銘じておくべきでしょう。

今回のキュレーションメディア問題は、情報を掲載するとはなにか、メディアを運営する責任とはということについて一石を投じたといえる問題でした。

(村山ひでこ)

参考になるサイトと書籍(←ここ大事)

文中でも紹介しましたが、文化庁「著作権なるほど質問箱」はいろいろ参考になります。
http://chosakuken.bunka.go.jp/naruhodo/index.asp

ちょっと古い本なのですでに書店流通はしていないかもしれませんが、これも読んでおいたほうがいい本です。
私がWeb関係の仕事を始めてわりとすぐに購入した本でした。
代表的な著作権問題の判例等を紹介しながら著作権法32条についてさまざまな見解が掲載されています。
特に冒頭P12-13の適法引用のためのチェック・フローチャートは簡潔でわかりやすいです。

「クリエーター・編集者のための引用ハンドブック 」(ユニ知的所有権ブックス)
http://amzn.asia/1svnYGh

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